青木隆興 興徳寺

おっとりと優しい笑顔の青木住職

大阪市興徳寺の青木隆興ご住職。会う人をホッと和ませるような、おっとりとした優しい笑顔が印象的です。
「時代のニーズに合ったものを提供していきたい」とおっしゃる青木ご住職から、僧侶になったきっかけや、お墓に対する想いをお聞きしました。

―学校を卒業して、すぐにお坊さんになられたのですか?

青木住職:高校2年生の時に、先代の住職だった父が大きな手術をしまして、正座ができなくなったんです。
両親は私を跡継ぎにという感じではなかったのですが、父の病気をうけて、京都の大学へ通いながら父の僧侶としての仕事を手伝うようになりました。大学2年生の時に休学して、高野山で修行して復学し、父の手伝いをしながら学校へ通っていました。

―どのようなお手伝いをなさっていたのですか?

青木住職:関西では月命日という、故人が亡くなった日、例えば4月27日にご命日の場合は、5月27日、6月27日というふうに毎月お参りするのですね。
顔見知りの檀家さんのところへ月参りにおじゃまさせていただいて、お経をあげ、お話をさせていただいてたんです。
お坊さんとしての仕事に携わって20年になります。

―お父様がご住職で、ご自身がご住職になったのはいつですか?

青木住職:平成22年4月に、ちょうど父がまるまる40年住職をした節目になりまして、副住職から住職になりました。
その父は昨年(2012年)4月に亡くなったのです。
一人になってみて、住職は自分しかいないという自覚ができたのかなと思います。

毎月、月参りを170〜180件こなし、その中でお葬式や法事など多忙な日々を過ごしている青木住職。お忙しい中で、心がけていることや心の支えとなっていることをお聞きしてみました。

―僧侶として心がけていることはありますか?

青木住職:いつも自分がここのお寺のお檀家さんだったら、どうしてほしいのかっていうことを考えているんです。何も知らない状態で身内が亡くなった時、不安になっている時に、どうしてほしいのかと。
月命日にお伺いすると、月に一度、年に12回お会いすることになるんですね。その中で、そのご家族のお人柄がわかってくるのです。時が経ち、その家の方が亡くなられた時に「こういう人やったな」とこちらもわかっているので戒名もつけやすいですし、ご家族の方にも喜んでいただけます。
反面、妙に感情が入り込んでしまうとしんどい時もあります。自分の中でのコントロールが難しいです。
形のないお仕事なので、本当に「こころ」と「こころ」やと思います。
「どうしてもあなたに来てほしい」と、そう言っていただけると冥利に尽きます。

青木隆興 興徳寺

住職のこと

―ご住職になられて心の変化はありましたか?

青木住職:世間も知らずに高野山で修行をして、自分がえらくなったような気がしていたんですね、20歳の時ことです。ところが、自分はえらくなったわりには世間の評価がないと。そこのところでモヤモヤして、いろんな会に出たりしたのですが解消されなかったんです。

ある時、よそのお寺さんのお手伝いをしていたことがありまして、そこのお寺さんではいろんな人が入れ替わりにお手伝いをしていたんですね。檀家さんも毎月来るたびに知らない人がいるという感じでした。
月参りに伺ったあるお宅のおばあちゃんが、「兄ちゃん、来月も来てくれるの?」って言うんです。その時はお盆前でしたので、「お盆の時は違う人が来るそうですよ」って言ったら、「いや、兄ちゃんがいい」って。
その帰りの車の中で涙がポロポロ出てきまして、自分でもわからないような涙なんです。
何の肩書きもない状態で「お兄ちゃんがいい」と言われた時に、初めて他人に認められたという気がしました。その時が30歳くらいです。
それから10年の年月を経て、お檀家さんにも「落ち着きが出てきた」「まるくなった」と多少言われるようになりました。

―永代供養墓を建立したきっかけは?

青木住職:現在はライフスタイルも変わって、お子さんが東京に出ていったり、娘さんしかいないという家庭も増えています。今までの家とお墓が一緒になって、というスタイルはムリがあるんじゃないかと。
世の中のニーズに合ったやり方っていうのを、こちら側が提供してかなければならないと思ったのです。
ご夫婦やご両親と娘さんと三人で、など時代のライフスタイルに合わせたお墓を作ろうと思いました。
「うちのじいちゃんはどこなんだ」とならないように、知っている人がいる限り、お骨を「うちのはうちの」という感じでお参りできるようにしたいんです。

―33回忌を終えたあとも、供養していただけるのですか?

青木住職:永代供養墓は、33回忌を終えたあとも、合葬墓にてお寺がある限りご供養させていただきます。
年に2、3回合同で法要を営みますが、その際にお檀家さん同士がお話していたりするんですね。縁を結ぶ場にもなっているのかな、と思います。
普段お寺に縁のなかった方も「お寺は来てみるといいもんやな」って感じてお参りしていただけるような環境にしていきたいです。

現在お寺の外で行なっている活動や、青木住職の好きなことを伺ってみました。

―現在行なっている活動などはございますか?

青木住職:まだ組織としてちゃんと立ち上がっていないんですけれども、宗派を問わず、お坊さんたちが協力してフードバンクの活動をしています。大阪に釜ヶ崎という町があるんですが、牧師さんはいるけれどもお坊さんがいないという話がありまして。

―趣味はございますか?

青木住職:趣味・・・ですか? (笑)
沖縄の海が好きで、カヤックを・・・。

―シーカヤックですか? ご自分でお持ちなのですか?

青木住職:いや、借りて・・・ついこの間も (笑)
沖縄の座間味島(ざまみしま)の海が好きなので、座間味島でシーカヤックをします。
最近どうして座間味の海が好きなのかなと考えたんですけれども、自分の仕事は、人間が生まれて亡くなって、土に還る間のお手伝いをさせていただいてるのかなって思うんです。自然のサイクルの中のお手伝いをしているのかなって。
自然の中、海や森や、川の流れの音を聴いていると落ち着くんですね。自分なりの解釈なんですが、こういう仕事に携わっているから、こういう感じなのかなって、今年になってから思ったんです。
都会でうろうろするよりも、自然の中でぼーっとしてるのが好きですね。

―「形のないお仕事なので、本当に「こころ」と「こころ」やと思います」と、ふと出た言葉に、青木住職のお人柄が現れていたように感じました。ありがとうございました。

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